[初級編第10回]
フキダシの描き方・セリフの入れ方 その2
 今回は文字の指定や書体、そして描き文字について紹介します。また、ちょっと初級編からはずれてしまうかもしれませんが、写植(写真植字)についてもお話ししましょう。

●1)白く抜く文字・絵に
  重ねるセリフはこうする

 右のイラストのように、『バックがベタの絵にセリフを白く抜いて入れたい』、『背景のある絵にセリフを白くフチどって入れたい』、こんな時は、ちょっと変わった作業が必要です。

 指定には、トレーシング・ペーパーを使います。入れたいセリフが入るコマ全体をカバーするサイズに切って、原稿の端でテープを使い、とめます。トレーシング・ペーパーは半透明なので、下の絵が透けてみえます。文字を乗せたい部分に鉛筆でセリフを書き込んでいきます。
 下の写真を参考にしてください。これで実際に印刷されるときには印刷所で文字を反転して白く抜いたり、白いフチをつけてもらえます。

●2)かっこいい描き文字を描こう!

 写植で入れる文字は鉛筆で書きますが、背景などに入れる擬音などの文字は自分で描かないといけません。これを『描き文字』といいますが、スピード感あふれる背景にかっこいい描き文字は、さらなる迫力を与えてくれますし、ギャグシーンでのユニークな描き文字も必須ですね。ただこの描き文字、作家さんによって千差万別ですし、センスが問われるテクニックなので、ここでは注意点と基本テクニックの紹介にとどめます。

●雰囲気にあった描き文字を選ぶ

 基本というか、当たり前というか、そのシーンが持っている雰囲気にあわせて、描き文字の書体も変わってきます。右のイラスト(1)や(2)のように使い分ける必要があります。(3)のようにならないように(あえてねらうなら別ですけど…)。

●描き文字のフチを
 白くすると見やすくなる

 背景に埋もれてしまいそうな場合は、描き文字のまわりをホワイトで白くフチどると、見やすくなります。逆に文字を黒いフチで描いて、中を白く抜くこともあります。

●フキダシをやめて、
 描き文字にしてみる

 キャラクターのセリフもフキダシ&写植ではなく、描き文字にするとまた違った雰囲気になります。どちらが正解ということではありませんが、フキダシでセリフを入れる場合は、必ず読者に読んでほしいときに、描き文字でセリフを描く場合は読み飛ばされてもいい、くらいの感じでしょうか。

 描き文字は必ずこの書体でこう描かないといけない、という決まりはありません。背景の一部のように使ったり、フキダシの中に入れて使ったり、作家さんも工夫しています。皆さんも自分でいろいろ試してみてください。

〈番外編〉

『なぜセリフは鉛筆で書くのか? 写植とは何か?』
 前回の養成講座の後、こんな質問が寄せられました。初級編からは逸脱しますが、知っておいて損はないので、ちょっとご紹介しましょう。
 フキダシの中のセリフは鉛筆で書きますが、このセリフは専門の業者さんで、専用の文字『写植(写真植字)』にしてもらいます。この写植は裏に糊がついていて、フキダシに貼り付けられるようになっています。フキダシに書かれた文字はきれいに消してから、この写植を貼り付けますが、この時、文字を消しゴムで消すために、鉛筆でセリフを入れておくわけですね。
 またこの写植にはいくつかの種類がありますので、参考までに紹介しましょう。新人コミック大賞に応募する場合、この書体を意識する必要はありません。雑誌に掲載される時に、編集者が適切な書体の写植を選んでくれるからです。「どうしてもこの書体にしたい」場合は、原稿の欄外に鉛筆で「ここはなるべく太い文字で」などと書いておけばいいでしょう。
『タイトルのデザインは誰がやるの?』
 これも余談かもしれませんが、まんがの扉ページにあるタイトル文字もまんが家さんが描いているわけではありません。タイトル文字は専門的な言葉で言うと『ロゴデザイン』といいますが、そのまんがの内容や雰囲気を加味して、デザイナーさんが作ります。皆さんのまんがも入賞して雑誌に掲載される場合は、デザイナーさんが作ってくれます。応募作品の段階では、第1ページの裏に、タイトル名を鉛筆で書いておくだけで大丈夫です。

 さて次回は背景です。背景を描くときの注意点や基礎テクニックについて、ご紹介する予定です。お楽しみに!(10月16日(月)更新予定)
[初級編第9回]
フキダシの描き方・セリフの入れ方 その1
 今回から2回にわたって、フキダシ・セリフ全般についてお話します。新人さんの原稿を見ていると、フキダシがとても小さかったり、セリフが読みにくい原稿をよく見かけます。フキダシも絵の一部分です。位置やサイズ、形を工夫してあげることで読みやすい原稿に仕上げることができるのです。

●1)フキダシの形はいろいろ

『フキダシ』とは、セリフが入る専用のワクのことです。下のイラストで紹介したようにセリフの状況によって、たくさんの種類があります。
 通常は(1)や(2)のフキダシを使いますが、最近は(2)の雲形のものはあまり見かけなくなりました。(1)の方が手軽に描けるからでしょうか。(3)は叫んでいる場合、(4)や(5)は心の中で思っているセリフの場合です。ちょっと特殊なのは(6)ですね。電話でしゃべっている、スピーカーでアナウンスしている、などのときによく使われます。

●2)フキダシは右から左へと読む

 前回のコマ割りで『コマは右から左へ読む』とお話ししましたが、フキダシも同じように右から左へと読みます。またしゃべっている人物の絵に近いところにフキダシを配置するのが鉄則です。
 下の左イラストのような、先にしゃべった女の子のセリフを受けて、男の子がしゃべるコマの場合、フキダシがたすきがけになって、とても読みづらいコマになってしまいます。こんなときは素直に人物の配置を変えて、右の絵のようにしましょう!

●3)フキダシに入るセリフは鉛筆で書く

 Q&Aのコーナーでも何度も解説しましたが、フキダシの中の文字は雑誌に載る場合、『写植』(写真植字の略)という専用の文字に置き換えられます。応募原稿ではペンで書かず、鉛筆で書いてください。

●4)フキダシに入る文字は
     20Q(きゅう)が基本

 フキダシの大きさは、セリフの文字数と文字の大きさで決まります。文字の大きさは、写植という専用文字で20Q(きゅう)というサイズが基本です。
 また、少年まんがや少女まんがの場合、セリフの漢字にふりがな(ルビ)がつきますから、行間も多少広くなります。右に20Qの場合のスケール表を載せましたので、フキダシの大きさの参考にしてください。

●5)セリフは読みやすく改行しよう

 まったく改行がなく、ずらずらと文字を詰め込むと、とても読みづらいフキダシになってしまいます。右イラストのように文節で区切って改行してあげると、格段に読みやすくなります。

●6)長いセリフはフキダシを分ける

 ちょっと長いセリフをしゃべらせたい場合、下左イラストのように巨大なフキダシ1つにすべて入れるより、右のように2つに分けたほうが、はるかに見やすくなります。

●7)セリフは内枠の基準線内に

 タチキリなどの場合、下のイラストのように、フキダシやセリフの位置が原稿用紙の内枠の基準線からはみだしてしまうと、印刷する場合、文字が切れて読めなくなることがあります。なるべく内枠の中におさめるようにしましょう。
 次回は、フキダシに入る文字の種類や描き文字について紹介します。お楽しみに!(10月2日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
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