[初級編第12回]
背景を描こう(2)
 今回は効果背景の紹介です。風景を使った背景が、場所や時間、季節などの状況を説明するのに対して、効果背景はおもに登場人物の心理状態などを表現するものです。描き文字と併用して使うことも多いですね。シーンを盛り上げるためにも欠かせないテクニックです。

●1)読み手の視線を集める『集中線』

 下のイラストのように、コマの中で一人のキャラクターを目立たせたい場合や、向こうから物が飛んでくる場合などに、ぜひ使いたいのが集中線です。次のスピード線と同様に効果背景の中でも多用される技で、いろいろな場面で役に立ちますから、ぜひ習得しましょう。
 集中線の描き方を説明しましょう。まず下準備として集中線の中心点と線の範囲を鉛筆でしっかりマーキングしておきます(1)。次に定規を中心点から放射状にあてて、ペンで線を入れていきます(2)。この時、中心点を画鋲などで固定して、定規をあてやすくする人もいますが、そんなに厳密にする必要はありません。

 線は外側から中心点に向かって引くことになりますが、最初は太く、最後は細く描くようにするときれいな線になります。ペンにちょっと力を入れ、筆圧を上げて描き始め、じょじょに力を弱め、最後はスーッと抜く感じです。原稿を回しながら、常に上から下に線を引くようにすると描きやすいと思います。また定規で描いたばかりの線をこすらないように注意してください。
 (3)が完成形です。この後、はみでた線などはホワイトで消します。また、鉛筆のマーキングもきれいに消しておいてください。
 最初はなかなかきれいな線が描けないと思いますが、とにかく練習あるのみ。マスターできれば、線の密度や長さなどを変えながら多彩な表現ができます。

●2)絵に迫力を出す『スピード線』

 線で物の動きを表すのがスピード線(流線)です。集中線のように視線を集めるのとはちょっと違いますが、右のイラストのようにキャラクターの動きを表現したり、車などが疾走している感じを出したりする場合に重宝する技です。線の強弱、方向、粗密で、その物体の移動する方向や速度が表現できます。また物体の移動とは無関係に、たんに勢いとか迫力を表現したいときにも効果的です。

 描く場合の注意点は集中線と同様です。ただコマの中に中心点がないので、集中線より描きやすいと思います。少々線の太さが不揃いでもかまわないので、一気にリズムよく、シュッシュッと描くのがコツです。ていねいに描こうとゆっくり線を引いていると逆に勢いのない線になってしまいます。

●3)ここぞ!のシーンで使おう『ベタフラッシュ』

 集中線の応用で、イラストのように黒ベタの背景に集中線部分を白くする技です。キャラクターが何かを感じた!などの重要なシーンで使います。

 集中線を描き入れ、その外側を黒く塗りつぶしますが、通常の集中線を描くときよりさらに最初の線を太く入れ、線同士をつなげてしまいます。むずかしい技なので、1)集中線や、2)スピード線のテクに習熟してから挑戦してください。これができれば、さらに応用でベタフラッシュをセリフを入れるフキダシにしたりもできます。

●4)そのほかにも多彩な背景が…

 効果背景は『絶対こうじゃないといけない!』ということはありません。ここではいくつかの例を紹介しますが、既存の表現にしばられずに、自由に作り出していい背景なのです。あなたの感性や気分で新しい効果背景をぜひ考えてみてください。
 次回は問い合わせの多い、トーンについてお話ししようと思います。お楽しみに!
(11月20日(月)更新予定)
[初級編第11回]
背景を描こう(1)
 まんがの背景(バック)はおおまかにいって2種類あります。ひとつは風景などを描き込んだもの。もうひとつは集中線などの効果背景です。今回は風景にしぼって紹介します。 風景をきちんと描き込むことで、いつ(時間)、どこで(場所)などをきちんと説明することができます。人物の絵にくらべると少々地味かもしれませんが、コマに効果的に背景を入れてあげることで、わかりやすい読みやすいまんがにすることができるのです。

●1)まずは写真を参考に描こう!

 たとえば学校の建物を描くといっても、想像だけでは描けません。そこで参考にする学校が映った写真を用意します。この写真を見ながら学校の絵を描くわけです。最近はデジカメで撮って、パソコンのプリンターで出力することが多いと思います。プリントする写真の大きさを描きたいコマのサイズに合わせて、トレースするように描けばうまくいきます。
 なお、写真は自分で撮るようにしてください。絵やまんがに描いた人の権利があるように、写真にも撮った人の権利が存在します。安易に写真集などを参考に描くと、その権利を侵害してしまうことになります。また自分で撮った写真でも、風景に個人的な情報を特定できるようなもの(商店名や電話番号の入った看板など)が映っている場合は、これを描かないようにしてください。

●2)透視図法で描けばリアルに!

 ときには参考にする写真がなかったり、写真とは違うアングルで描きたい場合もあります。そんなときには透視図法という技を使って風景を描くとリアルに表現できます。透視図法には、2点透視、3点透視などがありますが、ここでは簡単な2点透視図法を紹介しましょう。  下のイラストのように、地平線上に2つの点(消失点)を設定します。そこから放射線状に基準線を鉛筆で引きます。平行に配置される窓枠や外観をこの基準線をもとに描き込んでいきます。この2つの点の間隔を広くとるか、狭くとるかによって絵はかなり変わります。あまり狭くとると、不自然に見えてしまうこともありますので、いろいろ試してみるといいでしょう。

●3)線に強弱をつけよう!

 下のイラストを見てください。均一な線で背景を描いてしまうと、とても平板で不自然に見えてしまいます。背景の基本は線に強弱をつけることです。遠くのものは細く、近くのものは太く、また光があたって輪郭がぼけるようなところは細く、影になって暗くなりそうな部分は太く描きましょう。いちいち描くペンを変える必要はありません。ペンに込める筆圧に強弱をつけ、太い線・細い線を描いてあげるといいでしょう。
 なお背景を描くには定規を多用することになりますが、あえて定規を使わないで、フリーハンドで描くことで、線に暖か味を出すこともできます。

●4)適度に省略する!

 特に写真をもとに風景を描くと、必要以上に描き込んでしまい、ゴチャゴチャした背景になってしまいがちです。この背景で何を伝えたいのか、たとえば『ここが学校帰りの路地であることがわかればいい』なら、遠方のビルや人物までは描き込まなくてもいいわけです。下のイラストのように背景をすっきり省略することで、見やすいコマになります。
 なお、背景がゴチャゴチャしがちな中に、目立たせたいキャラクターがいる場合は、そのキャラクターのまわりを白くフチどってあげると、人物だけを浮かび上がらせることができます。

 背景は楽しい絵ではないかもしれません。描くのに時間もかかります。どうしても人物に比べて手を抜きがちです。しかし背景がきれいに描かれていると、新コミの審査でもすごく目立ちます。がんばって練習しましょう!
 次回は『背景を描こう(2)』・効果バックです。集中線やベタフラッシュなど各種の効果処理についてご紹介します。お楽しみに!(11月6日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
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