[パソコン作画編第10回]
集中線を描く
 今回は集中線や流線などをパソコンで描く方法を紹介します。アナログの作画では、集中線はけっこう手間のかかる作業ですが、パソコンの場合はフィルター機能を使って、簡単に描くことができます。ただ、とてもきれいに線が引けてしまうので、「無機的に見えてしまう」と、この機能を使わない作家さんもいるようです。使用ソフトはComic Studioです。

●集中線を描いてみる

  では具体的に、集中線を描く手順をみてみましょう。
 上の大きなコマを選択し(画面では薄い緑色で囲った部分)、メニューから「集中線」を選びます。
 真ん中の赤い×印が中心点になります。プロパティで長さや線の間隔や入り抜きなどが設定できます。最初は思ったような集中線にならないかもしれませんが、数値やチェックボックスをいろいろ変えてみて、どのような集中線になるか試してみるといいと思います。特に「乱れ」を指定することで、ある程度の手描き感も表現できます。下にいろいろと数値を変えた例を紹介しましょう。
▼これは「曲率」をいじって曲線の集中線を作ったものです。
▼こちらは内側も外側も「入り抜き」にチェックを入れ、ウニ状にした例。
▼「ずれ」や「間隔」の「乱れ」などを使い、激しい勢いのある集中線です。線はきれいですが、手描き風な感じになりますね。
 気に入った集中線ができたら、プロパティのOKを押して確定させます。レイヤーに集中線などのフィルタを加えたことをあらわす印がつきました。でも「やっぱり少し調整しなおしたい...」という場合はプロパティの集中線を開けば、またやり直しができます。適度な数値を見つけるまでは大変ですが、コツがわかると、とても簡単にできます。

●流線を描いてみる

 同様に、スピード線などの流線もフィルター機能でできます。今度はメニューから「流線」を選びます。やはりプロパティで数値などを変えることで、様々な流線が表現できます。
 数値を変えて、いくつか作ってみましょう。
▼角度を変えてみました。
▼「ずれ」や「乱れ」を使い、激しい流線にした例です。
▼内外両方に「入り抜き」を入れ、曲率を変えた例。暴風のようなイメージが作れます。
 いかがですか? これでいろいろな効果背景が作れそうですね。ところで、Comic Studioのフィルター機能には、もう一つあります。「消失点」です。

●消失点はどう使う?

 上で紹介した、集中線・流線はそのまままんがの背景にも使えるものでしたが、この「消失点」は作画の補助機能のようなフィルターです。建物などを描くとき、2点透視図法できちんとパースを出しますが、この補助線を簡単に描いてくれる機能です。
▼消失点の場所や補助線の間隔などは自分で設定でき、補助線の数も好みで増やせます。
▼この補助線をガイドにして、別のレイヤーで、建物などを正確に描いていきます。邪魔になった補助線はあとでレイヤーごと消してしまえばいいわけです。そうそう使う機能ではありませんが、便利ですね。

 次回は変形機能の紹介をします。「顔を描いたら、目が小さすぎた」、「建物にもっとパースをつけたい」… そんなときに便利な機能です。お楽しみに!(7月7日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[パソコン作画編第9回]
トーンを貼る(2)
 トーンワークの続きです。前回はトーンの貼り方の基本を紹介しましたが、今回は応用編です。紙とペンのアナログ作画と同じように、パソコンでもトーンを削ったり、重ねたりして、様々な効果を出すことができます。なお今回も使用ソフトはComic Studioを使います。

●トーンを削る

 トーンを削る場合は、貼ったトーンの上から、消しゴムツールやブラシツールで、トーンを消していくことになります。どのツールを使うかで、効果は変わります。  下は消しゴムでトーンを消した時の画像です。トーンレイヤー上で消しゴムで消したり、ペンツールなどで描き足したりもできます。
 こちらはトーン削り専用のブラシツールで削った画像です。カッターで削ったような削り効果ができます。
 実際の原稿で効果をみてみましょう。女の子の髪の毛のトーンを削って、ハイライトを入れてみました。髪に立体感がでますね。

●トーンを重ねる

 今度はトーンを重ね合わせてみましょう。基本はアナログ作画と同様に複数枚のトーンを重ね貼りすればいいのですが、ただそのまま貼ると下のようなことになります。
35L20%のトーンの上に、同じ線数(35L)の10%のトーンを重ねてみました。キッチリと重なってしまい、これでは重なっているように見えません。そこで10%のトーンを移動してやります。重なったところが濃くなりましたね。
さらに重なったトーンを回転させてモアレの効果を出すこともできます。
 実際の原稿の事例です。女の子の髪の毛の影になっている部分(緑色のところです)に重ね貼りして、暗くします。なお全体に55L20%のトーンが貼られています。
 ここに影の部分のみ10%のトーンを貼ります。下の絵は貼った後のものですが、ぴったり重なっているため、濃くなりません。
 そこで、先ほどと同じように10%のトーンを少しずらします。これで濃くなります。
 なお、トーンを移動や回転させるときは、まずプレビューでの作業で確認したほうがいいでしょう。トーンがどのように見えるか、シミュレーションができますので。

●グラデーションをかける

 濃淡のついたグラデーションのトーンを貼り付けることもできます。下の絵、二人の後ろにある校舎の窓にグラデーションをかけてみましょう。貼りたい部分(窓の部分ですね)をまず領域選択します(緑色の部分です)。次に「素材」から使いたいグラデーショントーンを選び、プロパティのプレビューをチェックします。
プレビューの状態のまま、トーンを移動・回転し、貼り付けます。新しくできたグラデーショントーンのプロパティを開くと、移動・回転や線数変更・長さや濃度変更など微調整が可能です。
さらに、トーンを削ったりして、ガラスっぽい硬質感をつけてみました。完成です。
 いかがですか? 様々な表現が簡単にできてしまいます。ある作家さんは、パソコン作画を導入して、作画が早くなったのは良かったのですが、いろんなことができるので逆に作画に凝ってしまい、原稿の上がる時間は変わらなかったとか…

 さて次回は、フィルターを使った様々な特殊効果について紹介します。背景をぼかしたり、うねりをつけたり、パソコン作画ならではの手法です。お楽しみに!(6月16日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[パソコン作画編第8回]
トーンを貼る(1)
 仕上げの中で何が一番手間かといえば「トーン貼り」でしょう。特に髪の毛などの入り組んだ部分のトーンはカットするだけでも大変です。パソコンで作画する大きなメリットがこの「トーン貼りが簡単」なことです。貼るところを指定すれば、一発でトーンが貼られますし、気に入らなければやり直しも容易です。あとあとトーンがはがれてしまう心配もありません。今回はこの「トーン貼り」について紹介しましょう。今回も作画ソフトはComic Studioを使用します。

●線画の修正をしておこう

 トーンを貼る前に、まずは線画の修正をすべて済ませておきましょう。トーンを貼ったあとに線画の修正がでると、線だけでなくトーンまで修正しなければなりません。手間をかけないためにも、線画はこの段階で確定させておいたほうがいいと思います。

 サンプルは線画修正前の画像です。修正箇所は赤い円で描いてあります。
消したい絵が描画されているレイヤーを選択し、消しゴムツールで消していきます。
 もし下の絵のように、消しゴムで消しすぎた場合(消しすぎた箇所は赤い円内です)は…
 ヒストリーで戻る(ctrl+z)で線を消しすぎる前の状態に戻ってやり直せます。失敗を恐れることはありません。簡単ですね。
 消しゴムでなくホワイトをのせて修正することもできます。この場合、ホワイト用のレイヤーを新規作成し、マジックなどの描画ツールでカラーは白を選択します。通常のまんが作画と同じように、絵の上に白インクをのせて、消していく感覚です。何らかの理由で後に修正前の状態に戻したりする場合には、このホワイトをのせる方が便利かもしれません。
 注意したいのはホワイトをのせると、そこに白インクがのっている状態…ということになり、選択範囲をするときに、ホワイトの所だけが選択されません。後でトーンを貼る際は、そのホワイトのレイヤーを線画レイヤーと統合すれば問題ありません。もちろん「もう後は修正しない…これで完璧!」という確認をしてから統合しましょう。
 これで修正完了です。下のイラストの状態ですね。
 なお後で修正前の状態に戻りたくなる場合にそなえて、こまめにデータを保存しておいたほうがいいでしょう。つねに上書き保存していると、いざという時に戻れないので、ゲームなどのセーブデータと同じように、重要な変更がある際はファイル名を変えて別に保存しておきましょう。また保存先などを分けて(別のHDDやCD-RW、USBフラッシュメモリなどに)保存しておけば、HDDが壊れた…などの不測の事態が起きても最悪すべてのデータがなくなるということはありません。

●トーンを貼ってみよう

 準備が長くなりましたが、ここからトーンを貼る工程に進みます。パソコン作画ソフトにはアミ点トーンの他にも、柄のトーンなども収録されていますが、作業の基本は同じです。サンプルではアミ点トーンを髪の毛に貼ってみます。

 まずはマジックワンドツールなどでトーンを貼りたい箇所を選択します。画像は女の子の髪部分を選択してます(実際には選択範囲は点線で表示されますが、わかりやすくするために画面では紫色で囲ってあります)。
 選択範囲をする時に出るランチャーの右端で、アミ点などの簡単なトーンは貼れますが、基本的には「素材」から貼るのが良いでしょう。
 ちなみにこちらがランチャーで新規トーンを選択した際に出る画面です。アミ点や線などの種類や濃度など調節してからOKボタンで貼れます。
 戻ります。「素材」から貼りたいトーンを選択し、左上の素材の貼り付けボタンでトーンが貼れます。
 トーンを貼り終えた状態です。
 「え、これだけ?」と思われるかもしれませんが、本当に簡単ですね。むしろ、この前の修正のほうが大変です。気に入らなければ、1ステップ前に戻って、いくらでもやり直せます。

 次回は、グラデーションなどのトーン応用編です。お楽しみに!(6月2日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[パソコン作画編第7回]
ベタを塗る
 いよいよ実際の仕上げ過程に入っていきます。ベタ塗り→トーン貼り→ホワイト処理、と進んでいきますが、今回はベタ塗りについて解説していきます。基本はどのソフトも同じですが、今回もComic Studioを使ってみます。

●ベタ塗り前に線の太さを調整しておく

 ベタを塗る前に画線幅の調整をしておきましょう。最初にスキャナーで取り込んだ線画は場合によっては、イメージより太かったり、細かったりしますので、適正な線幅に修正します。
 取り込んだ線画のレイヤーのプロパティを開きます。右下の「閾値」の数値を増減させると線の幅が変わります。
 閾値を下げると、画面のように太く力強い線に、
 閾値を上げると、細くシャープな線になります。
 この値を調整して、気に入った線幅になるようにします。線幅はベタ塗り後でも変えられますが、塗った後に線を細くすると、下の画面のようにベタと線の間に白が出てしまいますから、なるべくベタ塗り前に線幅は調整しておいたほうがいいでしょう。

●ベタを塗る範囲を決めて塗りつぶす

 線幅の下準備が終わったら、ベタを塗っていきます。まずはベタ塗り専用のレイヤーを作ります。  次に、塗りつぶしたい範囲を決めるために、マジックワンドツールを選びます。ツールアイコンの中から魔法の杖みたいなアイコンを選び、塗りつぶしたいところでクリックします。
 塗りつぶしたい範囲が点線で囲まれます。
(点線部分をわかりやすく緑色で表示しました。実際には点で囲まれるだけで色は付きません。)
 メニューから「選択範囲を塗りつぶし」を選びます。
 塗りつぶす色(ここでは黒)を選びます。これでベタが塗られます。
 またComic Studioの最新版では、選択範囲を作成すると「選択範囲ランチャー」というバーが下に出てきます。ここから簡単に塗りつぶすこともできます。
 基本はこれの繰り返しです。失敗したり、ここはベタじゃない方が良かったというなら、手順を前に戻せますから、簡単にやり直しができます。最終的に右の画面のような形でベタ塗り完了となります。

 次回は「トーン処理」です。基本手順はベタ塗りと同様ですが、トーンならではの技なども紹介していきたいと思います。お楽しみに!(GWで1回お休みします。次回の更新は5月19日(月)の予定です)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[パソコン作画編第6回]
枠線をひく
 スキャナーで線画の取り込みが終わったら、まず枠線をひきます。パソコン作画なら、この枠線も自在に太さや間隔、サイズが変えられます。定規を使って平行・垂直をだす必要もありません。また、コマからはみだした線画を自動で消す設定にすることもできます。一度使うと、その便利さに驚かされます。では、具体的な手順を解説していきましょう(ソフトはComic Studioを使います)。

●枠線をひく手順

(1)枠線定規レイヤーをまず作ります。レイヤーウィンドウにある「定規」の横のボタンを押して作ります。レイヤーウィンドウの上部分にある「新規レイヤーの作成」ボタンか上のメニューバーの「レイヤー」から「新規レイヤーの作成」でも可能です。この枠線定規レイヤーで、まず「枠線の下書き」をします。
(2)ページ内側にある基本枠の所に青い太枠ができます。
(3)枠線定規レイヤーのプロパティです。ここで引くワク線の太さなどを設定できます。 (4)ツールボックスから「枠線定規カット」というツールを選択します。なお、ツールオプションから線の間隔などが設定できます。
(5)さくさくとコマを割ってる途中の画像です。
(6)コマを割った後です。四角で囲まれた「調整が必要な枠線」をこれから動かします。
(7)ツールボックスの「定規選択」ツールを選択。動かしたい線を選択しました。線が赤くなっています。
(8)選択した赤い線を移動させている画面です。そのすぐ左にある青いのが動かす前の位置です。
(9)タチキリにしたいときもまず定規選択ツールで移動したい線を選択します。ページの一番下の枠線をタチキリにしてみましょう。
(10)下の枠線を下げていきます。タチキリの場合、枠を完全に外に出さず画像のように原稿の内側にとどめ、描いた線画の所までしか下げません。線画がめいっぱい描かれてないのに枠線が外に出てると、枠と線画の間に空白が生まれてしまい、後々作業をするときに範囲選択がしづらくなってしまうからです。
(11)コマを割り、タチキリなどもできたら、枠線の下書きは終わりです。これから、青線で引かれた枠線を黒い実線にします。定規選択ツールで割ったコマをすべて選択します。画像のように線がすべて赤くなってる状態です。
(12)メニューバーの「レイヤー」から「レイヤーのラスタライズ」を選択します。右にあるレイヤーウィンドウの右上部分にある「メニュー表示」からもラスタライズができます(×マーク下のメモに三角矢印がくっついたようなマークの所です)。
(13)ラスタライズの前に、プロパティでも設定が可能です。コマを割るときに線幅の設定を説明しましたが、この段階で線幅を設定しても良いでしょう。
(14)黒い枠線が引かれたレイヤーができました。一応完成です。ただ、枠線の外(コマ間)は白く塗りつぶす設定になっているので、本来枠線からはみ出る「ドーン」などの描き文字が消えてしまっています。
(15)こちらは、枠線の外を白く塗りつぶさない設定にしたものです。これならば、描き文字は見えますが、余計な部分も出てしまいます。
(16)そこで、枠線の外にはみ出る描き文字だけを出してみます。
(17)枠線のレイヤーの不透明度を落とします。うっすらと枠線レイヤーとかぶってしまってる所が見えます。
(18)赤線の部分の枠線レイヤーに消しゴムをかけます。下のレイヤーにある「ドーン」の文字を出てきます。このあと、枠線レイヤーの不透明度を元に戻してやります。他にもやり方はありますが、これが一番わかりやすいやり方です。
 いかがでしたか? 手順とすれば一見面倒ですが、慣れると手描きにはもう戻れません。なお、今回はComic Studioを使用しました。枠線をひくことは当然Photoshopなどでもできますが、これほどの機能は他のソフトにはありません。

 さて次回は、ベタ塗りの手順を紹介してゆきます。お楽しみに!(4月21日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[パソコン作画編第5回]
レイヤーって何?
 ちょっと番外編っぽくなりますが、今回は『レイヤー』のお話です。レイヤーはパソコンでまんが作画するときに、とても大切な概念であり、機能です。これをきちんと理解することで、背景と人物を自在に重ね合わせたり、一部のトーンだけ簡単に修正したりすることができます。

●レイヤーはアニメのセル画みたいなもの

 右の絵を見てください。この絵は様々なパーツの組み合わせで1枚の絵になっています。フキダシだけの絵、描き文字だけの絵、背景…など全部で7枚の絵が合成されています。
具体的に見てみましょう。下のイラストは、ソフトのレイヤー機能のウィンドウと、それぞれのレイヤーに対応した7枚の絵の重なり具合をあらわしています(使用ソフトはPhotoshopです)。
 これがレイヤー機能です。イメージはアニメのセル画でしょうか。透明なセル画に人物などの絵を描き、背景画と重ね合わせると、人物が手前に見えます。さらにもう1枚、セル画に人物を描いて重ねることもできます。この1枚1枚のそれぞれのセル画がレイヤーです。コミックの場合は1つの絵がだいたい数枚ていどのレイヤーで構成されていますが、カラーイラストなどでは数十枚ものレイヤーを使うこともあります。

●レイヤーを使いこなせば作画は楽になる

 一見すごく面倒ですが、レイヤーを分けて絵を描くことには様々なメリットがあります。それは、
(1) 修正をしやすくする
(2) 重なり具合や位置を検討できる
(3) おもしろい効果を出すことができる

などです。
 例えば、上の絵を普通に原稿用紙にペンで描いたとしましょう。描き終わった後で、「もっとフキダシを小さくしたい」と思ったら、バックのプラットホームの屋根を描き足さなければなりません。「人物の位置をもっと線路寄りにしたい」なら、もっと大変です。
 こんな場合、フキダシや人物、背景などがそれぞれ別のレイヤーになっていれば、フキダシを大きくするだけでOKですし、人物だけの絵をずらすだけで大丈夫なのです。背景のレイヤーはイラストのように完全な一枚絵になっていますから、この上に重なっている人物のレイヤーだけを移動させれば完了です。簡単ですね。

 また、それぞれのレイヤーは重ねる順序や表示・非表示を変えることで見え方が違ってきます。ソフトのレイヤー機能で描き文字とフキダシのレイヤーを非表示にすれば、右のような絵になります。

 それぞれのレイヤーの画線以外をすべて透明にすれば、右の絵のような効果を出すこともできます。
 いかがでしょうか? 面倒に思うかもしれませんが、レイヤー機能はパソコン作画ならではの強力な機能です。パソコンで作画するプロの作家さんは、このレイヤー機能に習熟しています。というか、レイヤーを使いこなせないと仕事になりません。
 今回は、レイヤーの説明のために、細かくレイヤーを分けましたが、実際はもっと少ないレイヤー枚数で済ます作家さんもいます。とりあえず、いろいろ試してみて、まずはこのレイヤー機能に慣れてください。

 次回は、実際の作画に戻ります。取り込んだ原稿を仕上げていきますが、今回お話ししたレイヤーの具体的な使い方になります。お楽しみに!(4月7日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)村川和宏
[パソコン作画編第1回]
パソコンでできること
 初級編、実践編と続けてきた『まんが家養成講座』ですが、今回からまんが作画でトレンドの「パソコンを使った作画」について紹介していきたいと思います。最近はプロの作家さんだけでなく、新人コミック大賞の応募でもパソコン作画作品がみられるようになってきました。ただパソコン作画はこれまでに解説した方法とはまったく違うテクニックが必要になってきます。勝手が違うので戸惑うことも多いのですが、使いこなせれば、とても便利なツール(道具)になります。
 ただしあくまで道具ですから、これだけで絵が上手くなるわけではありません。また本格的に使うためには相当のお金がかかります。それでもこういう作画の方法があるということは知っておいて損になることはありません。

●パソコンでまんがを描くってどういうこと?

 右の写真を見てください。これはあるプロ作家の方のパソコン作画環境です。キーボードの向こう側にあるのは、ペンタブレットというものですが、これに専用のペンで絵を描いていくことになります。描いた絵はその奥にあるモニターに映し出されます。

 パソコンをお持ちでしたら、グラフィックソフトを使って簡単なお絵描きなどをしたことがあると思いますが、基本はその延長です。また作家さんによってパソコン作画の程度はまちまちで、
[1]絵コンテから仕上げまで、すべてパソコンで描く
[2]線画までは原稿用紙とペンで描き、以降の仕上げをパソコンで行う
[3]ベタ・トーン処理のみパソコンで行った後、原稿用紙に出力して、手描きで修正をする
など様々なスタイルがあります。
 主流は[2]で、アシスタントさんが担当する作業をパソコンで省力化しようという目的で使っている作家さんが多いようですね。

●パソコン作画の便利なところと不便なところ

 パソコンで作画するメリットは何でしょう。一例をあげてみましょう。

 左の線画イラストにベタを塗ったり、トーンを貼ったりしたい場合、従来でしたら、筆でスミを塗ったり、トーンをカッターで切り抜いて貼ることになります。これがパソコンの場合、簡単な操作で一瞬で完了します。

 しかもはみ出しを気にしたり、失敗することはありません。また、「やっぱり髪の毛はトーンの方がよかったかな、服も別の柄で…」などのときも、手順を戻してやり直しできます。

 実際の見え方のシミュレーションが簡単にできるわけです。気に入らなければ何度でもやり直しができます。
 ここで紹介したのはほんの一例ですが、パソコン作画のメリットをまとめてみましょう。
○失敗してもやり直しが簡単
○トーン貼りやベタ塗りが一発でできる
○修正が楽にできる
○人物配置や描き文字・フキダシ位置などの検討もできる
○トーン代などがかからない
○ワク線などの均一な線が簡単に引ける


などでしょうか。もちろんデメリットもあります。

×機材を揃えるのにお金がかかる
×操作を覚えるのに時間がかかる
×仕上げなどはきれいにできるが、絵がうまくなるわけではない
×パソコンが壊れたり、などのトラブルに弱い
×絵にアナログ感がなくなり、単調になりやすい


 このメリットとデメリットをあなた自身で判断し、パソコン作画をするかどうか決めてください。お試し用のソフトウェアなども販売されているようですから、まずはそれを使ってみて、気に入ればパソコン作画環境を整えるというのがいいと思います。
 なおパソコン作画した作品だから、新人コミック大賞の審査で有利になったり、不利になったりすることはありません。

 次回はパソコン作画に必要なソフトウェアや機材について紹介したいと思います。お楽しみに!(2月4日(月)更新予定)
[実践:めざせ!受賞編第16回]
ペン入れ(2)
 今回はペン入れの順番について紹介しましょう。必ずこの手順のとおりにしないといけないわけではありませんが、プロの多くの方は基本的にこの順番でペン入れしていきます。

●この順番でペンを入れよう

[1]下描きの終わった原稿

 前回でもサンプルとしてとりあげた原稿です。これがどのようにペン入れされていくのか紹介します。

[2]まずはワク線を引く

 最初に0.8mmのサインペンなどですべてのワク線を引いてしまいます。一番最初にワク線を引くのは、絵をどこまで描くかの基準を決めるためです。ワク線を後回しにしてしまうと、あとでワク線から絵がはみ出すことが多く、修正が大変です。なお、ワク線を引くときには、すべてのコマの横線だけまとめて引いてから、次に縦線を引いてゆくという手順になります。

[3]人物の主線を入れる

 次にGペンなどで各コマの人物だけを描きます。このとき、人物でも背景のような扱いになるシーンではここではペン入れをせずに、後の背景を描くときに入れることもあります。

[4]フキダシを描く

 セリフの入るフキダシを入れます。なお描き文字はこの段階で入れましたが、人物にかかる場合は 主線を入れる前に入れることもありますし、背景の後に入れることもあります。

[5]背景などを入れる

 最後に背景や効果線などを入れます。これでペン入れは完了です。
 ペン入れ順番の鉄則は、
『手前にあるものから描いてゆく』
そして
『同じ種類のペンで描けるものは一気に描く』
です。
 どちらも修正の手間をより少なくして効率的に描くためです。プロの作家さんは多くのアシスタントさんと作画しますから、分業が徹底していて、ここで紹介したような手順を流れ作業的にやっていく場合が多いようですね。ただし、皆さん独自にこのほうが描きやすいという手順があるならば、それを優先させてもいいと思います。

 次回もペン入れの続きになります。サインペンや筆ペンなど便利な道具の使い方などについて紹介する予定です。お楽しみに!(9月18日(火)更新予定)

サンプルまんが作成 (C)十神 真
[実践:めざせ!受賞編第13回]
絵コンテ(ネーム)を描く
 以前の『ストーリーの作り方9』でも紹介しましたが、ストーリー構成が終わったら、絵コンテ(ネームと呼ぶこともあります)を作ります。構想の段階から、より具体的な表現へと進み、コマを割り、絵やセリフを入れた絵コンテで最終的なまんがの吟味をするわけです。この絵コンテが完成すれば、これ以降、大きな直しは基本的にはしません(絵の調整やセリフの変更などは原稿にペンを入れる段階でもあります)。絵コンテがまんが作りの最終的な、そしてこれから始まる作画の設計図となるのです。

●絵コンテの描き方

 絵コンテの基本は
[1]だいたいのコマ割りをすること
[2]フキダシ、セリフはしっかり入れること
[3]キャラクターの絵や背景はていねいに描く必要はない
(ただし絵の構図はわかるように)
[4]必ずページ数を入れる

といったところでしょうか。  プロのまんが家になって、編集者に絵コンテを見てもらう場合は、絵や背景を下書きに近いくらいまでに入れることもありますが、他人に見せるのでなければ、簡単な絵でもOKです。下に絵コンテの実例を紹介しましょう。
 このくらいの絵が入っていれば、まんがとしても読めますね。最初は練習にもなりますので、なるべく絵を描き入れるようにしてみましょう。
 なお絵コンテを描く紙ですが、専用の絵コンテ用紙をもっている作家さんもいれば、市販のノートに描く人、コピー用紙を使う人など様々です。描き方も含めて、要は本人にとって、描きやすく見やすいものであればなんでもいいのですが、まだ絵コンテになれていない場合は、実際のまんが雑誌と同じB5版のノートや紙に描くことをおすすめします。「このくらいのサイズのコマは、実際にはどう見えるか」判断しやすいからです。

●絵コンテは描き直すもの

 冒頭で「絵コンテはまんがの設計図」と紹介しましたが、設計図ならば、なるべく仕上がりに近いものを作ったほうが後の作画もスムーズです。プロの作家さんも完成度を高めるために、絵コンテを何度も描き直します。大きく構成からやり直すこともあれば、ページを入れ替えたり、1ページまるまる描き直したりも当たり前です。
 描き直すことが前提の絵コンテですから、下に紹介したような、バインダーやルーズリーフ、クリアブックなどを使うと効率的です。ページの入れ替えも楽ですし、描き足しや直しも新しい紙を追加すればいいのです。
 次回からは実際の作画に入っていきます。まずは下描きです。下描きを描くときのテクニックやコツをご紹介しましょう!(8月6日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[実践:めざせ!受賞編第12回]
コマ割りと構図(2)
 今回はタチキリや変形ゴマの使い方についてお話ししたいと思います。コマの基本はワク線で四角く囲んだものですが、もっと迫力を出したい、もっと印象的にしたいなどの場合、変形ゴマなどを使うことがあります。多用すると読みづらくなってしまいますが、ここぞというシーンで使うととても効果的です。

●絵が広く描けるタチキリ

 まんが雑誌を読んでいると、紙いっぱいに描かれたコマをよく見かけます。タチキリ(裁ち切り)というコマです。原稿用紙の版面(内側の青色の線)からはみ出して描きますが、広くコマがとれるので、背景をきちんと描き込んだり、キャラも大きく描くことができます。変形コマの一種ですが、多用してもさほど読みづらくならないため、最近はほぼ全ページをタチキリで描くまんが家さんもいるようです。例をあげてみましょう。
 各1コマ目を変えてみました。[1]は通常のコマ、[2]がタチキリのコマです。全体のコマの配置を変えずに、[2]は背景や人物が大きくできます。新キャラの登場シーンなどでは効果的ですね。[3]はさらにワク線をなくしてみました。絵がさらに広々としますが、これは多用せず、アクセント的に使ったほうがいいと思います。
 なお、右のイラストのように、雑誌のノド側(雑誌を綴じている部分)に向けたタチキリもありますが、ノド側は読みにくいので使わない方がいいでしょう。また、タチキリを使う場合はフキダシのセリフ位置にも注意してください。外側にセリフを入れると、切れて読みにくくなったりします。セリフはなるべく版面内に収めてください。


●ここぞというときの見開きカット

 クライマックスなどで、さらに大きく絵を入れたい場合は、右ページ・左ページ両方を使った見開きカットが効果的です。2ページをすべて1カットに使う場合だけではなく、下のサンプルのように上段のコマだけを見開きにすることもあります。
 見開きカットを描く場合の原稿用紙の使い方は通常と少々異なります。下に手順を解説しましたので参考にしてください。

[1] 2枚の原稿用紙の左側・右側を版面の青い基準線から15mmの位置で切ります。
[2] 2枚をくっつけて裏からセロハンテープなどで固定します。
[3] このような1枚の原稿用紙にして使います。この原稿用紙いっぱいに描くわけです。

 タチキリでもお話ししましたが、中心のノド部分は読みにくいのでノドに絵の大切なところがきたり、セリフが入ったりしないよう気をつけてください。なお応募する場合は、テープで固定した中心部分で折り曲げて封筒に入れればOKです。

●変形ゴマで画面に変化を

 通常の四角いコマではなく、斜めや台形にコマをとって表現することもあります。構図との関係で、斜め上からの見下ろすようなアングルなので台形にコマをとりたい、スピードや動きの方向を出したいので斜めにコマをとりたい、などの場合です。変形ゴマは、いいアクセントになりますし、画面に華やかな感じを出したりできるので重宝します。
 下のサンプルでは、同じシーンを、[1]が通常の四角いコマ、[2]が斜めの変形ゴマで表現してみました。サンプルのような動きのあるコマでは、[2]のほうが迫力がありますね。
 もちろん変形ゴマにしても、あまり効果がないこともありますし、多用すると読みづらくなってしまう場合もあります。使いどころと効果を考えて選択しましょう。

 次回はネーム(絵コンテ)の作り方についてです。まんがを描く上で最終的な設計図になるのが絵コンテです。この絵コンテをもとに内容の吟味をしますから、まんが作りで一番大切といってもいいかもしれません。お楽しみに!(7月17日(火)更新予定)
[実践:めざせ!受賞編第3回]
ストーリーはどうやって作るのか?(3)
 今回は『キャッチ』についてお話ししましょう。『キャッチ』はまんがだけの言葉ではなく、広告や商品開発などの業界でも大切な考えです。「この商品は他の商品とここが違うのだ、優れているのだ」とアピールする文章や表現が『キャッチ』です。「20%増量で、お値段半額!」や「アカデミー賞8部門受賞!審査員も泣いた感動超大作!」など、まず注目してもらう、そしてその商品を買ってもらうための考え方なのです。

●それは新鮮か? オリジナリティーがあるか?

 プロの作家さんは、まんがの構想を練るとき『キャッチ』=「このまんがが他のまんがと違うところ、新しいところ、魅力的なところ」を必死で考えます。それが面白さにつながることをよくわかっているからです。比喩が不適切ですが、キャッチは『武器』といいかえてもいいかもしれません。あなたがたくさんの応募まんが作品と闘って、受賞するための武器です。少しでもアピールするためには、強い武器(キャッチ)を手に入れなければならないのです。

 キャッチは「新鮮さ」と「オリジナリティー」が命です。たとえばファンタジーまんがを描いたとして、どこかの小説と同じ内容やキャラクターでは、「どこかで見たような、ありきたりなまんが」と思われてしまいますし、読んではもらえないかもしれません。新鮮であり、唯一無二であるから、驚いて、おもしろがってくれるのです。では、キャッチはどうやって見つけるのでしょうか?
 一番はテーマでもお話ししましたが「なぜこのまんがを描きたいのか?」ということです。あなた自身が面白いと感じたから、そのまんがを描きたいと思ったのでしょう。どこが面白いと感じたのかを、もう一度よく考えてみてください。それがキャッチになるのです。

 例えば、「こんなキャラクターが刀でこんなバトルをするのが面白い」と思ったとします。それが今まで読んだどのまんがにもなかったのであれば、それはキャッチになります。またテーマが斬新で、誰もやったことがないものなら、それがキャッチになるかもしれませんし、主人公のキャラクターが魅力的なら、それがキャッチになります。女の子の絵がとてつもなく可愛く描けるなら、それも立派なキャッチです。キャッチはストーリーだけの考え方ではなく、作品のあらゆるところがキャッチにできるのです。

●『キャッチ』はまんがを読ませる力になる

 よく読んでいるまんが雑誌に新しい作品が掲載された時、あなたはどう読みますか? まず数ページ読んでみて、面白そうなら読み進める…、そうでなければパラパラめくっただけで読み飛ばしてしまう… そんな感じでしょうか。
 すでに有名な作家さんの作品なら、とりあえず最後まで読んでもらえるかもしれませんが、まだネームバリューのない新人作家さんは、読み飛ばされたら終わりです。いくらキャッチが面白かったとしても、最後まで読まないとわからないようでは、読んでもらえないのです。「全部読めば面白い」ではダメで、「最初の数ページで面白い」を目指すべきです。そしてキャッチをそこにしっかりと盛り込んで、わかりやすく表現しましょう。もし考えたキャッチがバトル、アクション系ならば、いきなり壮絶なアクション・シーンから入る…、癒しやヒーリングがキャッチならば、大きなコマをゆったりと使った自然の風景シーンを多用してみる…、のもいいかもしれません。

 また、扉ページにも力を入れましょう。応募作品を見ていると、かなりなおざりな扉ページの作品を見かけます。これではアピールできません。キャッチやキャラクターが1ページに凝縮したのが扉ページです。それがしょぼいと、それだけで敬遠されてしまうかもしれません。「これから、すごく面白いまんがが始まりますよ」というキャッチにあふれた絵をぜひ描いてください。映画のポスターなども参考になります。
 魅力的なキャッチを作ることは本当に難しいことです。しかし同時に、キャッチが弱いもしくはないまんがは雑誌掲載もされません。まんが雑誌では年に何回か、新連載作品のコンペをやります。数か月先に始まる連載作品を決める大切な会議です。まんが家さんが作ったキャラ表やコンテに担当編集が企画書をつけて提出し、十数作品から、数作品を絞り込みます。このとき重視するのがキャッチです。キャッチが明確で優れていれば、ヒットする可能性も高まるからです。

 新人コミック大賞の審査も同じです。絵はまだまだ発展途上でも、表現したい内容が新鮮だったり、オリジナリティーがある作品は高評価されることが多いのです。「こんなにまんががあふれているのだから、斬新なキャッチなんてないよ…」と思うかもしれません。でも現在、ヒットしている作品は、確かに作者が思いついているのです。限界があるわけでも尽きてるわけでもありません。  何か一つ、小さいことでもかまいません。それを磨いて、ふくらませて、魅力的なキャッチにしてみてください。

 次回は「エピソード」についてです。お楽しみに!(3月5日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[実践:めざせ!受賞編第1回]
ストーリーはどうやって作るのか?(1)
 この『まんが家養成講座』も初級編のスタートから半年が経ちました。今回から『まんが家養成講座』はちょっとステップアップします。題して「めざせ!受賞編」。新人コミック大賞で受賞するための作品創りをより具体的に紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
 さて第1回は、ストーリー作りに欠かせない4つの要素についてです。面白いストーリーはどうやって作るのか? 基礎のところからお話しして行きましょう。なお、特に断りがない限り、32ページ前後の読み切りまんがを作るためのストーリー作りに限定します。連載などの場合とは若干違う場合がありますので…

●面白いストーリーは4つの柱がしっかりしている

 あなたが、あるまんがを読んで面白いと感じたとします。いったい何が面白かったのでしょう?
「主人公がとても魅力的だった。私もこんな人になれたらなあと思った」
「読後感がすごく良かった。気持ちが晴れ晴れした」
「あっと驚く展開で、今まで見たことのない新鮮なまんがだった」などなど…
 面白いと思う理由はさまざまだと思いますが、必ず共通する要因があります。それは、
『テーマ』
『キャッチ』
『キャラクター』
『エピソード』
の4つがしっかりとしていて、しかもそれぞれが魅力的であることです。
ではそれぞれについて紹介しましょう。

●『テーマ』…このまんがで何を伝えたいのか?

まんがの核や幹であり、骨格のようなものです。その作品全体に流れている音色といってもいいかもしれません。あなたがまんがに込めたい想いやメッセージもこれにあたります。
 たとえば、『友情』とか『大人への階段・成長』とか『恐怖』、『癒し』、『痛快』…といった簡潔な言葉で表現されます。テーマ自体は新しい概念や考えである必要はなく、人間の感情に根ざした普遍的なものであることが多いようです。また複数のテーマが共存してもOKです。ただし、一度決めたテーマはぶれてはなりません。太い幹のようにしっかりしていることが大切です。最初は『熱い友情』だったが、最後は『恐怖・ホラー』になってしまった…なんてことのないように。
 テーマがしっかりしていると、読後感が違います。

●『キャッチ』…このまんがのウリは何か?

 このまんがは他のまんがと、ここが違う、ここがすごいんだ!とアピールするものです。広告などで、その商品の魅力を伝える短い文章(キャッチコピー)と同じです。テーマと混同されがちですが、テーマが古典的・普遍的であってもよいのに対し、キャッチは明確に「新鮮さ」、「オリジナリティー」、「他との差別化」が要求されます。
 たとえば、『1ページで必ず2度笑う!新感覚ぬいぐるみギャグ!』とか『子供なのに先生?学園下克上ラブコメディー』など(例がいいかどうかは別ですが…)、これは面白そうだ! と興味をもってもらえる内容を明確にしたものです。
 むろん奇抜だからいいというわけではありませんし、ここであまり高いハードルを作ると、結局表現できずに中途半端なまんがになってしまうことも多いので注意。

●『キャラクター』…登場人物は魅力的か?

 いうまでもなく、そのまんがの魅力を左右するのがキャラクター(登場人物)です。どんな姿形なのか?性格は?趣味は?口癖は?好きな物は?苦手な物は?生い立ちは?…などビジュアルをイメージしながら具体的に設定します。プロの作家さんのアイデアノートには、思い通りのキャラクターにたどりつくまでラフスケッチを何十枚、ときには何百枚も描いた苦闘の跡が見られます。それだけキャラクター作りには悩むわけです。もちろん主人公やヒロインだけでなく、脇役などのサブキャラまでイメージします。
 基本的にはテーマやキャッチを考えてから設定しますが、関係なく普段から「こんなキャラがいたらいい」とか「いつかこんな主人公をまんがに登場させたい」キャラクターをノートなどに描きためておくと、メインキャラじゃなくサブキャラに使えそうなキャラを発見したり、重宝します。

●『エピソード』…何が起きるのか?何をするのか?

 文章でいう段落のようなものにあたります。たとえば「学校が突然、何者かに乗っ取られる」「主人公だけがトイレにいたために難をのがれる」「主人公の学校奪回作戦が始まる」…etc ストーリーはこれらエピソードの流れと積み重ねで成り立ちます。主人公がどんな子なのか? かっこいいのか? 楽しいやつなのか? これもエピソードをどう表現するかにかかっています。キャラクターの魅力を引き出すのもエピソード次第なのです。
 32ページの読み切りまんがでは、そんなにたくさんのエピソードは入りませんので、重要度や面白さによって、ページをとるものとさらっと数コマでながすもの、そしてばっさりカットするものなどの重みづけをするのが普通です。

 これら4つの柱がストーリーを構成しています。どの柱が重要ということではなく、どれもが大切であり、またそれぞれが影響を及ぼし合う関係です。いくらキャラクターを魅力的に設定したとしても、それを生かすエピソードが作れないと、読者に伝わりません。またキャラクターはテーマにその行動原理が縛られますし、キャッチをうまく表現できないと、キャラクターもエピソードも死んでしまいます。
 ストーリーを考える場合は、まずこの4つが明確か?面白いか?を吟味してください。これがしっかりしていれば、面白いまんがとしての土台は万全です。

 次回は、それぞれの柱について、より具体的な発想の仕方を考えてみたいと思います。お楽しみに!(2月13日(火)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
[初級編第14回]
トーンを使おう(2)
 トーンの続きです。前回の後、皆さんから「トーンの削りがうまくいかない」「もっと詳しく教えて欲しい」というご意見を多数いただきました。というわけで、今回は『トーンの削り』について掘り下げてみたいと思います。

●1)削りができれば、こんな効果も

 トーンを削れれば、表現の幅はぐっと広がります。下のサンプルイラストを見てください。左はリアルな立体感の表現です。影と光の境界部分を削ってあげることで、グラデーションのような効果を出すことができます。この技はメカや背景などをリアルに見せる場合に重宝します。
 右は煙などの表現に使った例です。湯煙・雲・霧などの自然現象を表現する場合にも削り技は欠かせません。

●2)削るときはカッターの刃を寝かせた方向に動かそう

 カッターの刃は少し寝かせて使った方が動かしやすいようです。イラストのように刃を寝かせた方向に動かします。これで削れるのか疑問に思う人もいるかもしれませんが、大丈夫です。逆に刃を向けた方向に削ろうとしてもひっかかってうまく削れません。またカッターを扱う作業ですので、ケガをしないよう十分注意してください。

●3)削りの角度は22.5度で

 これはアミ点のトーンを削る場合の注意点です。イラストを見てください。アミ点のトーンを拡大したものです。点のならびが角度にして、0度・45度・90度…となるようにならんでいます。
 もしこの45度ずつのならびにそって削ってしまうと、右のイラストのように、アミ点がごっそりと削れてしまい、きれいなグラデーションにはなりません。
 そこで、削る方向を45度の半分、22.5度にします。もちろん厳密に22.5度で削るのは不可能ですから、だいたいでも大丈夫です。『直角を4分割した角度』とおおまかに目安をつけて削ってみてください。

 これを1方向だけではなく、下図のように多方向から削ってあげると、きれいにいきます。
 いかがでしたか? ちょっと初級編からは逸脱してしまったかもしれませんが、トーンを使いこなすには『削り』は必須です。トーンを数枚ムダにする気持ちで練習してみましょう。次回は、新人コミック大賞に応募するときの注意点についてまとめてみたいと思います。お楽しみに!(12月18日(月)更新予定)
[初級編第10回]
フキダシの描き方・セリフの入れ方 その2
 今回は文字の指定や書体、そして描き文字について紹介します。また、ちょっと初級編からはずれてしまうかもしれませんが、写植(写真植字)についてもお話ししましょう。

●1)白く抜く文字・絵に
  重ねるセリフはこうする

 右のイラストのように、『バックがベタの絵にセリフを白く抜いて入れたい』、『背景のある絵にセリフを白くフチどって入れたい』、こんな時は、ちょっと変わった作業が必要です。

 指定には、トレーシング・ペーパーを使います。入れたいセリフが入るコマ全体をカバーするサイズに切って、原稿の端でテープを使い、とめます。トレーシング・ペーパーは半透明なので、下の絵が透けてみえます。文字を乗せたい部分に鉛筆でセリフを書き込んでいきます。
 下の写真を参考にしてください。これで実際に印刷されるときには印刷所で文字を反転して白く抜いたり、白いフチをつけてもらえます。

●2)かっこいい描き文字を描こう!

 写植で入れる文字は鉛筆で書きますが、背景などに入れる擬音などの文字は自分で描かないといけません。これを『描き文字』といいますが、スピード感あふれる背景にかっこいい描き文字は、さらなる迫力を与えてくれますし、ギャグシーンでのユニークな描き文字も必須ですね。ただこの描き文字、作家さんによって千差万別ですし、センスが問われるテクニックなので、ここでは注意点と基本テクニックの紹介にとどめます。

●雰囲気にあった描き文字を選ぶ

 基本というか、当たり前というか、そのシーンが持っている雰囲気にあわせて、描き文字の書体も変わってきます。右のイラスト(1)や(2)のように使い分ける必要があります。(3)のようにならないように(あえてねらうなら別ですけど…)。

●描き文字のフチを
 白くすると見やすくなる

 背景に埋もれてしまいそうな場合は、描き文字のまわりをホワイトで白くフチどると、見やすくなります。逆に文字を黒いフチで描いて、中を白く抜くこともあります。

●フキダシをやめて、
 描き文字にしてみる

 キャラクターのセリフもフキダシ&写植ではなく、描き文字にするとまた違った雰囲気になります。どちらが正解ということではありませんが、フキダシでセリフを入れる場合は、必ず読者に読んでほしいときに、描き文字でセリフを描く場合は読み飛ばされてもいい、くらいの感じでしょうか。

 描き文字は必ずこの書体でこう描かないといけない、という決まりはありません。背景の一部のように使ったり、フキダシの中に入れて使ったり、作家さんも工夫しています。皆さんも自分でいろいろ試してみてください。

〈番外編〉

『なぜセリフは鉛筆で書くのか? 写植とは何か?』
 前回の養成講座の後、こんな質問が寄せられました。初級編からは逸脱しますが、知っておいて損はないので、ちょっとご紹介しましょう。
 フキダシの中のセリフは鉛筆で書きますが、このセリフは専門の業者さんで、専用の文字『写植(写真植字)』にしてもらいます。この写植は裏に糊がついていて、フキダシに貼り付けられるようになっています。フキダシに書かれた文字はきれいに消してから、この写植を貼り付けますが、この時、文字を消しゴムで消すために、鉛筆でセリフを入れておくわけですね。
 またこの写植にはいくつかの種類がありますので、参考までに紹介しましょう。新人コミック大賞に応募する場合、この書体を意識する必要はありません。雑誌に掲載される時に、編集者が適切な書体の写植を選んでくれるからです。「どうしてもこの書体にしたい」場合は、原稿の欄外に鉛筆で「ここはなるべく太い文字で」などと書いておけばいいでしょう。
『タイトルのデザインは誰がやるの?』
 これも余談かもしれませんが、まんがの扉ページにあるタイトル文字もまんが家さんが描いているわけではありません。タイトル文字は専門的な言葉で言うと『ロゴデザイン』といいますが、そのまんがの内容や雰囲気を加味して、デザイナーさんが作ります。皆さんのまんがも入賞して雑誌に掲載される場合は、デザイナーさんが作ってくれます。応募作品の段階では、第1ページの裏に、タイトル名を鉛筆で書いておくだけで大丈夫です。

 さて次回は背景です。背景を描くときの注意点や基礎テクニックについて、ご紹介する予定です。お楽しみに!(10月16日(月)更新予定)
[初級編第5回]
1コマ、人物の絵を描いてみよう!
 まんがの基本は1つずつに区切られた『コマ』です。そこで今回は1コマのまんがを実際に描いてみることにしましょう。
下描き

●下描きを入れよう

1) 原稿用紙(市販のB4版のもの)に、これから描く絵の下描きを鉛筆で描いていきます。まずは定規と鉛筆を使って四角いワク線を引きます。そのワク内で、おおまかに人物の配置を決めていきます。
下描き 2) 次にその配置にそって、下描き線を重ねて描いていきます。気に入らなければ、どんどん線を重ねて描きます。
 線がゴチャゴチャしてきますが、よほど見づらくならない限り、消しゴムはかけません。ひんぱんに消しゴムをかけると、原稿用紙がケバ立って、次のペン入れの段階でインクがにじんだりするからです。鉛筆線もなるべく薄く描きます。


主線

●ペンで主線(おもせん)を入れよう

1) 下描きの上からGペンにインクをつけ、人物の線を描いていきます。ここでの注意点は、インクをつけてすぐに描かないこと。インクをペンにつけたら、まず不用な原稿用紙で試し描きをして、インクが垂れたりしないことを確認してから描きます。
 ペンの持ち方は写真を参考にしてください。

主線 2) ペンで線を描く基本は『上から下へ描く』です。上から下にペンを使えない場合は原稿用紙を回転させて描きます。ペンを下から上に動かしたりすると、原稿用紙にペンがひっかかったりしますし、思いどおりの太さの線が描けません。
 また線の太さは、原稿用紙に押しつけるペンの力でコントロールします。強く押しつければ太い線になりますし、弱く押しつければ細い線になります。


主線 3) 初めてペンを使う人は、なかなか思いどおりの線が描けないかもしれません。ここは練習あるのみです。少々はみ出したり、失敗しても、あとでリカバリーしますから大丈夫です。
 なお、描いたばかりの線を手でこすったりしないように、ペンを持つ手と原稿用紙の間に、ティッシュや紙をはさんでおくといいでしょう。




主線 4) 主線のペン入れが終わったら、0.8mmのサインペンでワク線を描きます。下描き線にそって定規を使い、線を引きます。

主線  この段階での仕上がりは左のイラストのようになります。

背景

●背景を描く

1) 次に背景を入れていきます。サンプルイラストの場合は集中線ですが、風景などの場合もこの段階で入れます。この段階でペンを使った作業はすべて終了させます。
 なお集中線などの背景の描き方については、回をあらためて紹介する予定です。

背景 2) チェックして線の描きもれがないようでしたら、しっかり乾燥させて、消しゴムで下描きの鉛筆線をすべて消します。消しゴムのかすが残らないように、写真のようなブラシを使うといいでしょう。






●仕上げ

1) 最後に髪の毛などをベタで塗りつぶしたり、はみ出した線などを修正液で消したりすれば完成です。
 ベタで塗りつぶすときは写真のような筆ペンが便利です。また小さな塗りつぶしならば、サインペンを使ってもいいでしょう。修正液は写真のようなハケ付きのものが手軽です。液がたれないように、容器のフチでぬぐって少量を塗ります。細かい修正が必要なら、ホワイトインクと細い筆を使いましょう。
仕上げ
仕上げ  とりあえず1コマの絵が完成しました。実際にはコマ単位でこのように描くわけではありませんが、絵を描く過程はわかっていただけたと思います。
 次回は“いろいろな大きさやポーズで人物を描いてみよう!”です。お楽しみに!(8月7日(月)更新予定)

サンプルまんが作成 (C)十神 真
[初級編第3回]
"これだけあれば、まんがが描ける"
道具をそろえよう!その1

●まんがに必要な道具

 今回は、まんがを描くために必要最低限の道具を2回にわけて紹介します。最初はこれだけそろえれば十分でしょう。他に便利な道具や素材もありますが、それは中級編以降でお話しします。  さて、道具にはダメになったり、減ったりしたら買い直す消耗品と、ほとんどずっと使える一生モノがあります。まんが道具を買うコツとしては
●消耗品は、とりあえず何を選んでもでもいい
●一生モノは、価格の高いものを購入したほうがいい

ということでしょうか。  ペン先やインクなどの消耗品は価格も安めなので、使ってみて自分に合わないなと思えば、買い換えも容易です。しかし定規などは、きちんと使えば一生モノです。まんが制作にはそれほどの精度は要求されませんが、なるべくいいものを購入したほうがいいでしょう。 では、それぞれの道具を紹介しましょう。

1)ペン先

ペン先  まんがで線を描くための基本的な道具です。これを2)のペン軸にはめ、3)のインクをつけて、線を描きます。さまざまな種類のペン先がありますが、とりあえず写真の2種類があればいいと思います。写真左がGペン、右が丸ペンです。

 Gペンは、おもに人物を描くときに使います。ペンを紙に押しつける時の角度や力で、太い線になったり、細い線になったりしますから、線に表情がつけやすいペンです。まずはこのペンで練習しましょう。
 丸ペンは、背景など線幅のそろった細い線を描くときに使います。きれいな細い線が描けるので、少女まんがなどでは人物もこのペンだけで作画する作家さんもいるようです。
 両方のペン先とも、数社から発売されています。描き味が微妙に異なるようですが、最初はどれを選んでもそう変わりません。買ったばかりの新品には、サビ止めにオイルが塗られていたりしますから、まずはティッシュなどできれいにふきとってから使いましょう。
●Gペン先:60円くらい
●丸ペン先:90円くらい

 なお、ペン先は消耗品です。使っているうちに先がすり減ったり、先端が開いて細い線が描けなくなってきたら交換時です。

2)ペン軸

 ペン先をはめて、下の写真のように使います。ペン先によって使用するペン軸は変わります。Gペンなどは右写真の下のタイプを、丸ペンは上のタイプを使います。ペン先をはめ、グラグラしないことが最低条件です。また握った時の感触も大切です。ただ人間の手や指は千差万別ですから、そうそうぴったりな製品があるはずもないので、既製品に慣れることも必要です。作家さんは、自分が使いやすいようにテープを巻いたり、ゴム製のサポーターをはめたりしているようです。
ペン軸
●フリーサイズペン軸:250円くらい
●丸ペン軸:200円くらい

3)インク

インク  ペン先に適量つけて、線などを描くためのものです。昔は「製図用インク」派と「墨汁」派に分かれていましたが、現在は製図用インクを使用する作家さんが多いようです。またまんが専用のインクも発売されています。インク選びは使用する原稿用紙との相性もあるので、できれば何社かのインクを試した上で、最終的に使用するインクを決めるとよいでしょう。  写真で紹介したのは、まんが制作によく使われるパイロット社製の製図用インク(写真左)と、アイシーのコミックスーパーブラック(写真右)です。どちらも乾くと耐水性になります。
●製図用インク:500円くらい
●まんが用インク:500円くらい

4)修正液

修正液  ホワイトとも呼びます。はみだした線をこれで消したりする時に使います。以前はポスターカラーの白を使うことが多かったのですが、今ではいくつかの便利な修正液が発売されています。  写真の左は、コミック専用の修正用白インクです。筆を使って修正するタイプです。使用後、筆を洗わないといけないので面倒くさいのですが、微妙な修正作業が必要なときに重宝します。右は刷毛(はけ)のついた油性の修正液です。手軽に使えるので愛用している作家さんも多いようです。ただし、細かい修正には向かない(慣れればできますが…)、インクとの相性が出ることがある、ので注意。
●修正用白インク:200円くらい
●油性修正液:400円くらい

 なお、こういったまんが用の道具は、ユザワヤなど大手の手芸専門店や画材店・文具店で手に入ります。もし近くにお店がないようでしたら、インターネットの通販ショップで購入しましょう。
 次回は道具の紹介その2です。原稿用紙や定規、サインペンなどの紹介です。お楽しみに!(7月10日(月)更新予定)

[初級編第2回]
1ページのまんがが描き上がるまで

●まんがを描く流れ

 第2回は、まんがを描く流れについて紹介しようと思います。どういう順番でまんがを描くかは作家さんによって微妙な違いはありますが、おおまかに整理すると、次の4つのステップになります。
1)絵コンテを描く
2)下描きを描く
3)ペン入れ
4)仕上げ
 サンプルまんがを例に、この各ステップを見ていきましょう。 060612a.jpg

1)絵コンテを描く

 これから描くまんがの設計図です。絵コンテではなく、ネームと呼ぶこともあります。ノートなどにおおざっぱにコマを割って(コマの大きさや配置を決めることを"コマ割り"といいます)、人物やセリフを入れ、コマの大きさなどはどうか? この場面でいいのか? セリフは? などの検討をします。まんがを描くときに一番大切なのがこの段階です。プロの作家さんもこの絵コンテに時間をかけ、おもしろいまんがにしようと悩みます。また、最初に文章であらすじを書いて、おおまかな話の流れを決めてから、絵コンテにとりかかる作家さんもいます。 060612b.jpg

2)下描きを描く

絵コンテが決まったら、それにそって原稿用紙に鉛筆で絵を描きます。次のペン入れのための下準備です。この下描きをなぞるようにペンを入れていきますので、なるべく薄く描きましょう。使う鉛筆ですが、硬いと原稿用紙に跡がついたりしますし、柔らかすぎると消すときに汚れるので、HB~2Bくらいがいいと思います。また、あまりにていねいに絵を入れてしまうと、ゴチャゴチャしてペンを入れづらくなりますから、サンプル画のように人物中心に描くくらいでちょうどいいでしょう。 060612c.jpg

3)ペン入れ

 下描きの鉛筆線をガイドにして、インクとペンで線を描いていきます。まず基準となるコマのワク線を入れ、人物を描き、最後に背景や効果線を描き入れます。その後、下描きで入れた鉛筆の線を消しゴムできれいに消します。 060612d.jpg

4)仕上げ

 最後は仕上げです。ベタを塗ったり、トーンを貼ったりします。また線のはみだしや失敗がある箇所を修正液などで修正します。この後、フキダシにセリフを鉛筆で記入して完成です。

 以上が、まんがを描く基本的な流れです。32ページのまんがを描くのであれば、まず32ページ分の絵コンテを描き、32ページの下描きを描く…といった具合にステップごとに進めていきます。ただ、プロの作家さんの場合は時間との闘いになりますから、自分に合った流れを決めて、ペン入れ、仕上げを1ページずつこなしていく人もいるようですね。

 次回は、"これだけあれば、まんがが描ける"道具の紹介です。(6月26日(月)更新予定)お楽しみに!

サンプルまんが作成 (C)十神 真

[初級編第1回]
かんたん"まんが用語"をおぼえよう!

●プロのまんが家になる第一歩です

 "どうしたら『まんが』がうまく描けるようになるのですか?"  新コミHPに寄せられる中で一番多いのが、この質問です。でもこの質問には一言では答えられません。まんがは絵・ストーリー・構成…など、さまざまな技術やセンスからなりたっているからです。読者を納得させるには、一つだけではなく、必要なすべてに習熟することが求められるのです。  この「まんが家養成講座」では、まったくの初心者でも"新人コミック大賞に入賞"し、"プロのまんが家になる"ことを目標に、まんがの描き方を紹介していきます。連載が進むにつれ、内容は次第に高度になっていきますが、今まで一度もまんがを描いたことのない人にも、わかりやすいようにお話しするつもりです。この養成講座をきっかけに、ぜひプロのまんが家を目指してください。

●かんたん"まんが用語"をおぼえよう!

 では今回から初級編のスタートです。第1回は、まんがを描くときによく使われる言葉について紹介しましょう。もちろんここで解説するもの以外にも、まんがの専門用語はたくさんありますが、それはおいおい紹介します。ここでは一番基本のものをピックアップしてみました。下のサンプルまんがを見てください。 060601a.gif

(1)コマ

 まんがのひとつひとつの場面(シーン)をコマといいます。この1ページは全部で5コマですね。内容にもよりますが、1ページに入るコマを多くしすぎると、読みづらくなってしまいます。

(2)ワク線

 コマをこの枠(わく)で囲って、コマとコマを離して、読みやすくします。あえてこのワク線を描かない場合もあります。サンプルまんがの2コマ目がそうですね。ワク線の基本は四角ですが、斜めにしたり、ページの上下左右で切ったりすることもあります。

(3)フキダシ

 登場人物がしゃべっているセリフを囲っているのがフキダシです。楕円形が基本ですが、怒鳴ったりする場合はこの形を変えて、強調したりします。5コマ目の女の子のフキダシがそうですね。

(4)キャラ(キャラクター)

 登場する人物のことをキャラ(キャラクターの略)といいます。絵の中で一番の華ですね。

(5)背景(バック)

 後ろに描かれている絵のことです。1コマ目や4コマ目などは効果線をつかった背景。5コマ目は廊下の背景です。背景で登場人物の気持ちを表現したり、登場人物が今、どこにいるのかをわかりやすくしたりします。

(6)トーン

 柄や模様、濃淡が印刷されたシールのような素材です。カッターナイフなどで切り出して、人物の濃い部分や背景に貼り付けます。サンプルまんがの人物の服などはすべてトーンです。

(7)描き文字

 ペンで描いた文字のことです。フキダシを使わずに、効果音などを表現したいときなどに使います。3コマ目の「うんうん」や4コマ目の「ゴゴゴゴ」が描き文字です。

(8)セリフ(ネーム)

 フキダシの中の文字です。実際のまんがでは、写植という専用の文字を使います。応募まんがでは、このセリフは鉛筆で描くようにしてください。

(9)ベタ(黒ベタ)

 髪の毛など、黒で塗りつぶすことを「ベタにする」とか「ベタで塗る」といいます。筆や太めのサインペンが使われることが多いですね。

 ということで、基本のまんが用語について紹介しました。わからないことがあれば、新コミHPのQ&Aに質問をください。この養成講座上でも解説していきたいと思います。
 なお、次回は、このサンプルまんがを例に、"1ページのまんがが描き上がるまで"を紹介する予定です。お楽しみに!(更新は6月12日(月)予定)

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