[実践:めざせ!受賞編第17回]
ペン入れ(3)
 今まで紹介しきれなかったペン入れ関係のエトセトラです。サインペンの使い方とペン入れ時の注意点などについて、お話ししましょう。

●サインペンは使えるか?

 Q&Aのコーナーによく寄せられる質問に「描きなれているサインペンでまんがを描きたい」というのがあります。確かにインクをつけて描く「つけペン」に比べれば、はるかに楽ですし、しっかりと乾かせば、かすれたりもしませんから手軽でしょう。しかしプロの作家さんはサインペンを使って主線などを描いたりはしません。理由は下のイラストを見てください。
 左のコマは前回ご紹介したサンプル原稿の1コマ目です。右は同じコマを0.3mmのサインペンで描いたものです。左のつけペンで描いたものと比べ、右のコマは校舎や体育館などの背景に立体感がなく、平板に見えてしまいます。均一な太さの線しか描けないので、線の強弱やタッチがつけづらいのです。筆圧を強くすればある程度の強弱は出せますが、すぐにペンがダメになってしまいます。

 では、サインペンはまったく使えないのでしょうか? 均一な線を引ける利点を活かして0.8mmのサインペンなどをワク線を引くのに使う作家さんはたくさんいます。また使いどころを考えれば、いろいろ活躍できそうです。上の例でも植え込みのところなどはサインペンでも違和感はありません。ほかにも例をあげてみましょう。

 太めのサインペンを使って、描き文字を描いた例です。このように均一な線で描いたほうがいい場合は積極的に使っていいと思います。





 このコマは演出効果の一つとして、わざと平板にバックの人間を描いた例です。「会社という組織の中に主人公も埋もれそうになる。自我を捨て、一つの歯車として無機的に生きる…」というような演出をしたいときなど、均一な線でわざと無機的な感じを出すのに使えます。

 またペン入れ時ではありませんが、仕上げのときにベタを塗りつぶすのに太いサインペンは重宝します。サインペンは主役にはなれませんが、いないと困る名脇役といったところでしょうか。

●原稿を汚さないために

 ペン入れの際、半乾きのインクをこすってしまったり、手の汗をつけてしまって、原稿を汚してしまうことがよくあります。汚れた箇所はあとで修正すればよいのですが、余計な手間をかけないためにも、汚さないに越したことはありません。プロの作家さんはどうしているのでしょう。  ペン入れするときはペンを持つ手の下に、ティッシュや紙をはさむのも一つの方法です。また指の部分を切ってペンを持ちやすくした薄手の手袋をする作家もいます。

 さらに慎重な作家さんは服の袖を気にして、事務用の黒い袖ガードを腕につけている方もいます。これは原稿が汚れることより、服の袖にインクのしみがつくのを避けているのでしょう。ただ作画中は手だけでなく腕が原稿に触れることも多いので、汚れてもいい長袖のシャツを着て作画することをおすすめします。

 もうひとつ。ペン入れの順番を工夫して、汚れにくくしている作家さんもいます。1枚の原稿を左上から右下へと描いていけば、作画済みの絵をこすったりはしにくくなります。下のイラストで(1)→(5)の順番にコマにペンを入れていくわけです。ただ、この方法は1コマごとにペンを取り替えながら作画しなくてはならないので効率的とはいえません。前回紹介したように主線→フキダシ→背景のように描くほうがいいと思います。
 原稿を汚さないポイントはインクをしっかりと乾かしてから次のペン入れに移ることです。もしインクの乾きが遅く、気になるようでしたら、ヘアドライヤーで強制乾燥してみてください。ただし温風をあてすぎると、原稿用紙がまるまってしまったりしますので、ほどほどに。

 あなたがプロのまんが家になったら「きれいな原稿を、早く描く」ことを求められます。限られた時間の中で相当枚数の原稿をこなすには、なるべく修正の手間を減らし、スピーディーに描き上げなくてはなりません。しかし新人コミック大賞に応募し、入選するのが目標なら時間はたっぷりあります。今はゆっくりでかまいませんから、ていねいに描いてください。

 次回からは仕上げに入ります。ホワイトの使い方、失敗のリカバリーの仕方などについて紹介します。お楽しみに!(10月1日(月)更新予定)

サンプルまんが作成 (C)十神 真
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