[実践:めざせ!受賞編第11回]
コマ割りと構図(1)
 まんが創りの順番では、ストーリーの次は絵コンテ(ネーム)となるのですが、その前にコマ割り構図についてお話しします。1ページをどのようにコマ割りするか、そのコマにどんな構図の絵を描くのかをおおまかにでも決めないと、絵コンテが描けないからです。なお、コマ割りの基本ルールについては、バックナンバーの初級編第8回『読みやすいコマ割り』を見てください。

●コマはそのひとつひとつに意図がある

 初級編ではコマ割りについてのみ解説しましたが、実はコマ割りと構図についてはセットで考えたほうがスムーズです。ここであらためて、それぞれの言葉について説明すると、

コマ割り…ワク線で区切られた絵(コマ)をページの中で、どんな大きさ・形でどの順番で配置するか、考えること
構図…ひとつのコマの中で描かれる絵(背景や人物、効果など)をどのように表現するか、視点や物体の大きさなどから考えること


 となります。たとえば、主人公とライバルが海にいて、対決しようとしていることをきちんと伝えたいから、背景には砂浜があって、斜め上から見下ろしたような絵に2人を配置する構図にして、大きなコマに。次のコマは主人公の決意にみちた顔のアップを入れよう、大きさは… というようにコマ割りをしていきます。大切なのは、そのコマで何を表現したいかです。それによって構図もコマの大きさ・形なども決まるのです。
 ではサンプルまんがを使って具体的に解説してみましょう。
 学園ラブコメまんがのシーンです。設定は『クラスにかっこいい転校生がやってくる。ヒロインはすごく内気な女の子。その出会い』です。

コマ1 転校生登場
 新しいキャラが登場してきたときは、まずはそのキャラの外見(ビジュアル)をしっかり読者に覚えてもらうことが大切です。身長は高いのか低いのか? 体型は細身・太め? 顔は? 髪型は? などなど。サンプルでは2段分とタチキリをつかってタテ長のコマを大きくとり、なるべく体型がわかるように、また横の先生との対比で背が高くみえるように構図をとっています。

コマ2 クラスメートたちの反応
 転校生の登場を受けて、クラスメートたちはこのキャラをどう思ったのか、その反応です。特に大きくする必要はないコマですが、このコマがあることで『女の子にモテそう…』と印象づけることができます。

コマ3 転校生の顔アップ
 コマ1と対になるコマです。新キャラ登場時の鉄則は、大きめで全身が入るカットと顔がしっかり見える顔アップのカットをセットで入れることです。

コマ4 クラスメートの反応2
 コマ3のしぐさを受けたクラスメートの反応その2です。コマ2と同様のコマですが、さらに反応をエスカレートさせます。このとき、さりげなくヒロインをコマ内に入れ、他の女子との反応の違いを出しておきます。なお、ヒロインの登場はこのページよりずっと前にあったと考えてください。

コマ5 ヒロインの反応
 その他大勢の女子ではなく、ヒロインがこの転校生のことをどう思ったのかをしっかりと印象づけなければいけません。騒いでるまわりをよそに、静かに顔を赤らめることでヒロインの内気な性格と『やはりこの転校生に興味を持ったこと』を顔のアップで表現します。

コマ6 先生の反応
 設定上、先生のキャラがさほど重要でないなら、特に先生の反応は入れずにここは流します。なお流れとしては、このコマの後に転校生がヒロインの席の後ろに歩いていき、席につくことになりますが、そのシーンに何かイベントを入れるのでなければ、必要ないと思います。先生の言葉で後ろの席につくことはわかっているからです。またコマ7ですでに席についていることで時間経過も表現できます。

コマ7 後ろの席の転校生を意識するヒロイン
 後ろの席にきた転校生、意識するヒロイン。前後に座る二人の位置をしっかり見せるため、斜め上からのアングルで、ここもタテ長のコマをとり、版面上のタチキリまで描きます。

コマ8 転校生、声をかける
 後ろから突然声をかけられるヒロインがすごく驚くシーンです。このコマでいきなり叫び声を入れても表現としては成り立つのですが、叫び声の印象がものすごく強いので、転校生が何をしたのかが薄くなってわかりにくくなってしまいます。場合によっては『転校生がなにかHなことをしでかしたのかも…』と意図せぬマイナスなイメージを植え付けかねません。そこで、しっかりと転校生の行動を入れ、ヒロインの刹那の反応にとどめています。

コマ9 ヒロイン、すごく驚く!
 過剰なまでのヒロインの反応を、叫び声のフキダシを大きく、しかもコマ左右いっぱいまでとることで、教室に響き渡るヒロインの叫び声をイメージします。声の大きさとコマの大きさは比例させてあげたほうが印象的になります。なおシーンとしては、ヒロインが叫び声をあげている絵にすることもありでしょうが、ヒロインの正面顔の絵が続いてしまうこと、また叫び声に対する先生およびクラスメートたちの反応の方が絵としておもしろそうなのでこの絵にしました。

コマ10 叫び声へのまわりの反応
 叫び声を発した後のまわりの反応です。立ち上がっているヒロイン、驚いている転校生やクラスメートたちをロングで見せます。叫び声というイベントがあった後にこのコマで落ち着かせます。と同時に、ヒロインの状態を見せることで、転校生がとった行動へのヒロインの感情も提示しておきます。もしこの絵が、ヒロインが後ろの転校生を向いて怒っているような絵でしたら、ヒロインは転校生へのあからさまな嫌悪感を示しているのでしょうし、座って泣いているような絵でも、転校生への嫌悪感につながります。なるべく嫌悪感が生じないように、条件反射的に叫び声をあげた、と思ってもらえるような絵が好ましいので、このような絵にしました(もちろん別な表現もあるかもしれません…)。

コマ11 先生の反応
 お約束です。いったい何があったのかを先生がきいています。流れで必要ではありますが、ここでは重要なコマではありません。

コマ12 転校生の反応
 先生からの問いかけはヒロインに向けられたものと思われます。しかし、ここでヒロインよりも転校生が先に答え、原因を作ったのが自分であること(彼女のせいではないこと)を明確に語ることで、転校生の潔い部分が表現されます。

 いかがですか? ある限定されたシーンですが、構図やコマの割り方をなんとなくわかってもらえたのではないでしょうか。コマのひとつひとつには意図があり、その意図によって絵の内容や大きさ、順番が決まっていくのです。また同じ内容のストーリーでも、人によって表現手段が違うように、コマ割りや構図にも個性が出ます。ここに挙げたサンプルまんがも、描く作家さんによって十人十色で違ったものになるでしょう。『読者が読みやすいように』という基本を守ってさえいれば、こうしないといけないということはないのです。

 次回はコマ割りと構図の第2回です。変形コマやタチキリ、見開きカットなどについて詳しく紹介しましょう。お楽しみに!(7月2日(月)更新予定)
サンプルまんが作成 (C)十神 真
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